Interview

西岡
職種:開発・設計
部門:セーフティセンシング技術部門
専攻:大学院 情報工学専攻
クルマ以上に惹かれた、自動運転・認識技術の世界
私は現在、『ミリ波レーダー』の認識アルゴリズム開発に携わっています。ミリ波レーダーは、電波を使って周囲のクルマや歩行者、障害物との距離や速度を検知する、いわばクルマの“目”のような役割を果たすセンサーです。このセンシング精度や認識性能を高めることで、自動運転技術や ADAS(先進運転支援システム)の性能を向上させ、交通事故のない“安心・安全なモビリティ社会”の実現を目指しています。
自動運転やADASにおけるセンシング技術は、自動車開発の中でも注目度が高い分野の一つ。その領域でコアとなる技術を担当しているので、根っからのカーマニアと思われるかもしれませんが、正直なところ、元々クルマに強い関心があったわけではありませんでした。
大学では情報工学を専攻し、画像情報処理を専門とする研究室に所属していました。そこで、超解像技術や符号化撮像技術・複数のカメラ画像からの三次元復元や姿勢推定など、幅広い画像処理・認識技術を学んでいました。そんな私がセンシング技術に興味を持つきっかけとなったのは、『デンソーミュージアム』での体験です。
ミュージアムで、夜間や悪条件の中でも人やモノを見逃さない技術や、ドライバーの代わりに危険を察知する技術があることを知り、衝撃を受けました。「自分も安全や運転の快適さに貢献できる技術に携わってみたい」と思ったことをよく覚えています。クルマそのものというよりも、いわば目や頭脳の役割を果たす次世代の技術に対する強い関心と期待を抱いたのです。
そしてデンソーへの入社の決め手になったのは、修士1年のときに参加したインターンシップです。実際に活躍する社員の方々と一緒に働く中で、業務や役割における裁量の大きさや、活発に議論が交わされる雰囲気に触れ、「この環境なら必ず成長できる」と思い、強く惹かれました。
以前から日本の産業の中で自動車が持つ影響力の大きさは知っていましたし、変革の時を迎えている自動運転や認識技術に携わりたいという希望とも合致して、デンソーで働くという選択に繋がりました。デンソーなら、Tier1サプライヤーとして、特定の完成車メーカーだけでなく全世界のモビリティに影響を与えられますからね。まさに、自分にとって理想的な職場だと感じました。
「いつもの安心、もしもの安全」を実現するミリ波レーダーの開発
後側方ミリ波レーダーのソフトウェア開発からキャリアをスタートし、その後は前方・前側方ミリ波レーダーの認識アルゴリズムの開発に従事しました。その開発において、GSP(※1)向けの物体・走路認識、認識シミュレーターの開発、業務プロセス改善、認識ソフトウェア開発のとりまとめなどにも取り組みました。経験を重ね、知識が身に付くにつれ、任される役割の範囲も少しずつ広がっていきました。
入社してから現在まで、一貫して自動運転・ADASに関わるミリ波レーダーの開発に携わっています。その中で最も強く感じているのは、“命を守る技術”の開発に主役の一人として参加しているやりがいです。
自分が手掛けたシステムが交通事故の発生を防ぎ、たくさんの人の命を守る——。責任は求められますが、人命にかかわる仕事に従事できることに大きな誇りを感じながら日々の業務に向き合っています。
一方で、「交通事故をどれだけ防げたのか?」という問いに対する定量的な回答は現段階では難しいのも事実です。それでも、「世界トップレベルの安全性能に貢献できている」という自負はあります。NCAP(国際的な自動車安全評価プログラム)など、実際に各国の自動車アセスメントプログラムで高い評価を獲得していることに加え、お客さまからの良いフィードバックもいただいています。客観的な評価とユーザーからの生の声の双方を受け取ることにより、私たちの技術が社会に役立っていることを実感できています。
一例として命を守る技術について紹介しましたが、それだけではありません。ACC(運転負荷軽減のための運転支援システム)やLKAS(車線内の中央付近走行を維持する運転支援システム)など、ドライバーの負担を軽減したり、渋滞時のストレスを和らげたりする運転支援技術の開発も担当してきました。デンソーが掲げる“いつもの安心、もしもの安全”という言葉が好きで、その“いつも”と“もしも”の両面で自分の仕事が貢献できていることが、今の私の原動力となっています。
(※1)「Global Safety Package」の略で、デンソーが開発するドライバーの運転を支援するシステムや予防安全・運転支援機能を含んだパッケージのこと
一人では辿り着けない答えを「総智総力」で導き出す
「挑戦は成功か学びしかない」──これは、私が心に刻んでいる言葉です。先輩の受け売りなのですが、新たな挑戦をするたびにこの言葉を思い出します。この言葉があるから、「うまくいかなくても必ず学びが残る」と自分を鼓舞して、前向きな気持ちで一歩を踏み出すことができています。
私にとっての最大の挑戦は、自分一人の知識では解決できない課題に取り組んで答えを出すことです。技術者は、一人で黙々と仕事をしているイメージを持たれがちですが、この仕事はそれだけでは成し遂げられません。
検討やプログラミングは個人で行うこともありますが、仕様の検討や結果のレビューは、常にチームで進めています。これは、私たちのチームに限った話ではありません。デンソー全体で“仕事はチームでやるもの”という文化が醸成されています。
個人で完結することなく、一人ひとりが得意分野や経験を持ち寄り、“総智総力”でよりよい答えを探していく。
一人で考えられる範囲には限界がありますが、チームで議論を重ねることで、自分にはなかった視点やアイデアに触れることもできるのです。そうしたプロセスを経て“できなかったことができるようになる瞬間”が何度も訪れ、そのたびに成長と喜びを実感しています。
その経験の1つが、次期型ターゲット選択仕様の設計です。レーダーが一度に出力できるターゲット数(検知対象数)には、種々の制約による上限がある一方で、GSP3から次期型に移行させる中、対応すべきアプリケーションやシーンは大幅に増加していました。
具体的には高速道路での遠方静止物、合流してくるクルマ、カーブの先の対象物など、それぞれのアプリケーションが「このシーンでは必ず検出してほしい」という強い要求を持っています。
しかし、すべての要望をそのまま積み上げると、レーダーが同時に出力できるターゲット数の上限を超えてしまう、という課題を抱えていました。
種々の制約から、ターゲットの絞り込みをしなければならない状況の中で、何を基準に取捨選択するのか。限られた枠で最大限の安全と機能を両立させる必要がありましたが、アプリケーションの仕様や過去の事故事例などを踏まえながらメンバーやお客さまと議論を重ねていくことで、全体最適となるように落とし込んでいきました。
このプロジェクトでは、私がメイン担当として仕様設計を担いましたが、一人で完結できるものではありませんでした。上司が顧客との架け橋になって方針を一緒に考えてくれたり、チームメンバーがアイデアを出してくれたり——。多くの人の知見とサポートがあったからこそ、最終的に胸を張れる仕様に到達できたと思っています。
AI×次世代センサーで、認識技術のあり方を変えていく
イメージングミリ波レーダーなどの次世代センサーと、AIを組み合わせた新しい認識技術の開発。これこそが、私の次なる挑戦のテーマです。世界のさまざまなメーカーに目を向けてみると、AIを搭載した新技術がこれから主流になっていくでしょう。領域を越えて、多種多様な知見を高い次元で融合させることこそが、次世代のクルマづくりには不可欠だと考えています。
デンソー、そして日本のモノづくりが世界の第一線で価値を発揮し続けるために、認識技術の進化を自らの手で切り拓いていきたいと思っています。
そのうえで、デンソーならではの強みを挙げるなら、“ハードウェアも含めてシステム全体を提案できる”ことです。ミリ波レーダーだけでなく、カメラやLiDAR(レーザー光を用いたセンシング技術)、各種ECU・アプリケーションといったハードとソフトの開発環境を社内に持ち、その上で複数の完成車メーカーとワンチームとなって開発することができます。
センサー単体の性能を高めるだけではなく、「車両全体としてどう動くべきか」「お客さまのシステムにとって何が最良か」という視点で全体最適となる提案ができるのは、デンソーだからこそできる価値提供です。
多面的なアプローチで課題を解決できる環境に身を置く中で、私自身も単一の機能開発にとどまらず、認識シミュレーターや解析ツールの改善など、開発プロセスの高度化にも取り組んできました。さらに社内副業制度『デジタル越境チャレンジ』を通じて、データ活用や新規事業に関わる部署で機械学習やデータ分析の経験を積み、そこで得た知見や人脈を、本業の評価・解析の質向上やプロセス改善に還元しています。
一歩先のモビリティ社会では、人が運転するクルマと自動運転のクルマが共存していることでしょう。私としては、いつもの安心をさらに広げ、完全自動運転に繋がる技術を開発していきたいと思います。その実現に向け、AI×センシングの力で命を守る技術を進化させていくことは必要不可欠と言えます。未知・未踏に挑む日々が続きますが、「挑戦は成功か学びしかない」という言葉を胸に、これからも開発を続けていきます。
これから仲間になる方へ



















未来のモビリティ社会にワクワクを
デンソーは、個の意見を尊重し合える、働きやすい職場です。また、一人では成し遂げられないスケールの仕事を、仲間と議論しながら形にできます。
センシングから制御、ハードからソフトまで、多様な専門性を持つメンバーと技術を磨きませんか?
命を守る技術や未来のモビリティにワクワクするなら、ぜひ一緒に働きましょう。