Interview

吉田
職種:デザイン
部門:デザイン部門
卒業:インダストリアルアートコース専攻
配属直後から、デザイナーとして認めてくれた
学生時代、私はプロダクトやサービスのデザインについて学んでいました。自然な流れで、自動車、家電などメーカーを中心に複数社を検討する中で、デンソーのインターンに参加したのです。
正直なところ、それまではデンソーの製品のこともよく知りませんでしたし、あまり働くイメージが湧いていませんでした。ところが、2日間のワークショップに参加して社員のみなさんと接し、ぐっと心を掴まれたのです。一言でいえば、「みんな自然体で仕事をしている」。学生向けに「カッコよく見せよう」と取り繕うのではなく、日頃の延長のような雰囲気で議論し、笑い、悩み、そして本気でデザインに向き合っている。この人たちと一緒に仕事ができたら、きっと楽しいだろうと強く思いました。
さらに話を聞くと、どうやらデザイン部がカバーする領域は極めて幅広いということもわかりました。デンソーの扱う幅広い事業におけるデザインに関わる多種多様な仕事を一手に引き受け、しかもそれをわずか35名ほどでやり切っているというのです。それぞれが得意分野を活かしながら、領域を越えたチャレンジをし、新しい課題も前向きに捉えている。毎回新鮮な気持ちで仕事に向き合えるのは素敵だなと思いました。
ワークショップの内容も印象に残っています。課題は、2日間かけて新しいユーザー体験やサービスを発案するというもの。HUD(ヘッドアップディスプレイ)やセンサーをつかって新しい体験を考える、という課題はとても刺激的でした。私は就職先を探す上で、「少数精鋭の組織で裁量をもって働きたい」「領域を横断して仕事をしたい」「未来を考える仕事に関わりたい」と考えていたので、デンソーはその3つとも満たしてくれると確信しました。
そして入社後、「きっとしばらくは雑務がメインなんだろうな」と、悠長に構えていた私は面食らいました。配属1日目から「このプロジェクトに入ってください」と仕事を任されたのです。「いきなり社会人になったぞ……!」と焦ったのを覚えています(笑)。もちろん先輩はそばで教えてくれますし、プロジェクトはチームで挑みます。けれど、しっかり自分の意見や意思を求められる。今振り返ると、配属初日から一人前のデザイナーとして認めてくれているということですから、光栄なことですよね。まさに求めていた環境そのものだと感じました。
インハウスだからこそ知れた、デザインの「深さ」
さらに驚いたのは、仕事のスピード感です。ときには1週間でアイデアを量産して、次の週には3案ぐらいに絞っていく。プロフェッショナルのテンポに不安を感じるとともに、胸が高鳴りました。「私のこんなに拙いラフスケッチを見せていいものか…」と悩んだのもいい思い出です。
初めて関わったプロジェクトは、クルマのCGデザインでした。新製品の展示会で流す映像に登場するもので、未来のトラック、カート、バスをビジュアル化するという仕事です。3名で取り組み、それぞれが得意分野を活かし、上手く補い合いながらつくり上げていく。まさに入社前の印象通りで、早くも思い描いていた世界に足を踏み込んだのだと感じられました。
その後も、デザイン部のスキルの多様さを感じる場面は続きました。たとえば、デザイン部のWebサイトのリニューアルです。グラフィックを得意とするリーダーは、文字詰めをはじめとするレイアウトすべてに1ピクセル単位でこだわる人でした。細かな微調整を行い、どれがより読みやすいか吟味するなど、私も必死についていく。本格的にグラフィックデザインに取り組むのは初めてだった私は、なんとかくらいつきながら、優れた表現は高い精度の上に成り立つのだと学びました。
ただ、そうしたテクニカルな側面は、あくまで手段です。インハウスで働くことの価値はもっと深いところにあると実感したのが、2年目に経験した他部署との仕事です。ある製品のプロモーションのために、小型のモビリティをデザインしてほしいという依頼でした。初めにCGで手掛けたクルマとの違いは、描くモビリティの実現可能性です。
技術部の機械設計の方が骨組みを設計し、それに沿って外観のデザインをするというのがミッションでした。デンソーの技術者の熱意は半端ではありません。一方こちらは、2年目とはいえ技術部の方に比べたら自動車に関しては素人です。技術者の方は製品としての機能性を重視しますし、こちらはデザイン的に譲れない部分があります。わからないことは素直に聞くけれど、受け入れられないことがあれば前提から疑問を投げかけました。「この部品、こちらに動かせないんですか?」とダメ元で聞いては突っぱねられ、それでも食い下がって両者が納得する折衷案を探していく。毎回のように議論が白熱していたのを覚えています。
不思議なもので、あれほど意見をぶつけ合ったのに、いえ、だからこそ最後は仲間意識が芽生えていました。「また別の仕事をお願いしたいです」とまで言ってもらえたのが嬉しかったです。こういう仕事はインハウスだからこそできることであり、面白味だと感じます。クライアントワークの場合、どうしてもお客さまの要望を受け入れざるを得ない瞬間もあるでしょうから。相手の懐に入り、腹を割って話し、一緒にモノづくりをしていく。私がデザイン部の本質に気付くことができた大切な機会となりました。
“らしさ”を引き出し、世界観をつくる
以前一緒に仕事をした部署からまた声をかけていただいたり、過去の私の成果物を見て依頼をしてくださったり。3~4年目になると、デザイン部の外との関係性が築かれていきました。それにともない、仕事のスタンスが、“オーダーに沿ったモノをつくる”ことから、“コミュニケーションを通じて世界観をつくる”ことへと広がっていきました。
転機になったのは、2年ほど前に担当した『EVECOM by DENSO』(EV充電制御システム)のUIとロゴデザインです。このプロジェクトも、まず依頼元の部署と話し合うところからスタートしました。その人たちのサービスに対する想い、熱意、ビジョンを聞き、カタチにしていくという手法です。ここで新たなチャレンジとして、ヒアリングするだけではなく、当事者自らが表現に携わるワークショップを導入しました。「このサービスをキャラクターにするとしたら?」という問いを投げかけ、みなさんに絵を描いてもらったのです。
できあがったのは、亀とタコを合わせた不思議で愛らしい動物。亀は“誰も置いていかない”、タコは“みんなと手を繋ぐ”。それらのキャラクターが『EVECOM by DENSO』の、そしてデンソーの社会に対する想いが詰まったロゴデザインへと繋がりました。デザインの対象をよく知ることからはじめ、“らしさ”を引き出し、世界観をつくり、見る人にその価値を伝えていく。コミュニケーションデザインの可能性を感じ、この仕事をきっかけとして、私にとっての次のチャレンジが始まりました。
デザインとは、流れを整えること
現在所属しているブランド体験デザイン部門は、デンソーの事業や組織のブランディングを手がけるチームです。インターナルとエクスターナルそれぞれのブランディングチームがあり、私は前者のリーダーを任されています。インターナル領域を追求し、スキルの“尖り”をつくりたいと考え、上司に相談し異動が実現しました。
そこで、早速2つの壁に直面しました。いずれも、異動から数カ月後に依頼されたあるプロジェクトでのことです。依頼は、技術系の部門長からのもの。「それぞれのメンバーが、共通の判断基準を持つことで、指示がなくても同じ目標に向かって行動できるようにしたい」という内容でした。まずワークショップを実施して現場社員の声からその組織の“らしさ”や、日々の業務で感じる“モヤモヤ”を抽出し、言葉やビジュアルとしてアウトプットし、行動指針に落とし込むという流れです。
1つ目の壁は、言葉づくりでした。「きれいな言葉だけど、私たちの仕事とは離れている気がする」、そう言われてしまったのです。悩みました。たしかに、威圧感がないよう、前向きな言葉選びを意識したのですが、そこまで違和感があるだろうかと再度手順を振り返って、ハッとしました。ワークショップを終えて、いきなり解答のように言葉が出てきたからではないかと。私たちがみなさんの発言をどう咀嚼し、アウトプットにつなげたかが理解されていないのだと気付いたのです。
そこで、制作過程を丁寧に共有するところからリスタートしました。ワークショップで発された言葉から、キーワードを拾い上げ、原文の温度を損なわない程度に差し込んでいく。途中の仮説や下書きも隠さず提示する。
結果、“私たちの言葉”として受け止められ、共感を生み出すことができ、最終的には、メンバー全員の目線を統一し、方向性を同じくする強い組織になるための8つの行動指針が完成しました。この過程で、自分たちの発言から生まれたものだと腹落ちしてもらう過程が非常に重要であると気付きました。
2つ目の壁は、持続性です。このときは言葉とポスターをつくったのですが、それをどう使い続けてもらうか? も難しいポイントです。トライしたのは、業務との接点設計です。今後、行動指針が生きたものとなるように、具体的な行動例・判断例に分解し、評価面談でも振り返れるようにするなど、普段の仕事の中に埋め込んでいきました。インターナルブランディングは“点”で終わっては意味がありません。社員のマインドや行動に根付き、持続的な“線”として再現されていかなければいけないのです。当事者意識の醸成と仕組みづくり、この両輪が大事だと学んだ印象的な仕事でした。
色々経験してきて思うのは、デザインとは“流れを整える行為”なのではないかということです。プロダクトであれば作り手とユーザー、会社組織であれば経営層と現場。双方に意思や伝えたいことがあるけれども、当事者だけだとどうしても滞ってしまう。その間に入って、流れをよくするのが私たちデザイナーの仕事なのではないかと思います。
入社から5年近くが経ちました。純粋にデザイナーとしてマルチなスキルが身についた1~4年目、インターナルブランディングの領域で自分の枠を広げている今。仕事を通じて学びながら成長してきました。ドイツやスイスへの出張、講習やセミナーなど、プロジェクト以外にもインプットの機会は多く、デンソーは惜しまず“人”に投資してくれる会社だと感じます。チャレンジを繰り返して、可能性を広げていきたいという人にとっては、きっと、これ以上ない環境だと思います。
これから仲間になる方へ



















あなたらしく、スペシャリストに
周囲にはさまざまな強みをもった先輩たちがいますし、自分自身がどんな方向に舵を切るかも自由です。
私自身がそうであったように、刺激を受けながら、自分なりの“スペシャリスト”を目指していただけたら嬉しいです。