Interview

山本
職種:開発・設計
部門:アナログデバイス開発部門
専攻:大学院 工学研究科 量子工学専攻
製品開発で大切なのは、“つくりやすさ”と“使われやすさ”の両立
「技術で社会の役に立ちたい」という想いを持ち、就職活動をしていました。中でも“命を守る仕事”に興味を持っていたところ、出会ったのがデンソーです。自動車部品メーカーとして予防安全技術の開発に取り組んでおり、“もしものことが起きる前に守る”というアプローチに惹かれました。
加えて、自社で半導体開発まで手がけている技術力の高さも魅力に感じたポイントです。「ここなら、社会的意義のある仕事ができる」という期待感から入社を決意しました。
入社後は、現在にいたるまで一貫してアナログデバイス開発に携わっています。最初に配属されたのは、エンジン向けの空燃比制御IC(集積回路)の開発プロジェクト。回路設計を任されましたが、何をするにもわからないことばかりで、先輩や上司に助けてもらってばかりでした。その中で、先輩方が常に利他的な思考をしていると気付きました。
当時、周囲の人たちによく質問していたのですが、皆さん必ず手を止めて私と向き合ってくれました。それは、私が新人だからではありません。どのような立場の人でも同様の対応をしていたのです。
“クルマの安全安心を支える”という責任ある製品の開発は非常に高度な技術が求められ、どんなに優秀な技術者でも単独では成し得ません。だからこそ、チームで価値を生み出すことを最優先するカルチャーが根付いていたのだと思います。
また、皆さんの“原理原則”を大切にする姿も印象に残っています。議論や意思決定の場では、「なぜそうなるのか」という本質から考えることが徹底されていたのです。新技術の開発・設計やトラブルが起きた時は表面的な事象の解決ではなく、物事の本質まで掘り下げて徹底的に検討・議論します。一切の妥協を許さない姿勢が、社会的意義のある成果を生み出す基盤になっているのだと実感しました。
そんな環境のもとで過ごせたことで、お客さまが求めていることをしっかり汲み取り、製品に反映させようという考えが身に付いたと感じます。特に、“つくりやすさ”を担保した上で、“使われやすさ”にもこだわるという考えが強くなりました。図面上での成立にとどまらず、実際の車両環境における振る舞いや、あらゆる条件下で安全性が確保されていることが重要だと考えるようになったのです。
お客さまが求めているものに寄り添った視点は、安全安心なモノづくりをするために欠かせません。そんな本質を見失わないように意識しています。利他的に助け合う文化や、原理原則から物事を考える皆さんの姿勢に触れながら働いた日々は、私の技術者としての軸を形成する大切な期間となりました。
用途が変われば設計思想も変わる、技術者の醍醐味を味わえるASIC開発
入社以来IC(集積回路)開発に携わっていますが、中でも長く担当しているのがASICです。ASICとは、特定の用途に向けた集積回路のこと。これまでに、エンジンやボディー、ADAS(先進運転支援システム)における製品を手がけてきました。
用途が変われば設計思想そのものが変わり、同じ手法が通用することはありません。製品が変わるたびに新しい知見が求められるため、難度の高い仕事だと感じています。
たとえば、エンジン向けのASIC開発の場合は、熱やノイズなどの過酷な環境に耐えうるよう設計しなければなりません。一方でボディー向けなら、クルマが停止しているあいだの暗電流を極限まで削ることも重要になります。
このように、ひと口にASICといっても、求められる価値も前提も全く違うのです。さらに、ASIC自体が非常に複雑な構造をしている製品でもあります。
近年高集積化が進み、大規模な製品では100万を超えるトランジスタから構成されており、そのすべての素子に意味があるため、1つの欠陥も許されません。ほんのわずかな構成の違いが製品の性能に大きく影響することから、常に製品の品質を最大限高めることが求められます。その際、単に機能を満たすだけでは不十分。「壊れたときにどう振る舞うか」「どのような回路にすれば壊れにくく、かつ検査しやすいか」「どうすれば安全性を担保できるか」といった故障検出まで意識した設計をすることが、完成車メーカーに製品を採用してもらううえで必要な視点だと考えています。
考慮すべきことが多岐にわたり、責任も大きな仕事ですが、ASICはクルマの安全安心に直結する製品。難しさの先に「守るべき命がある」と思えるからこそ、大きなやりがいがあると感じています。
加えて、技術者としての腕が確実に鍛えられていくことも、この仕事ならではの醍醐味です。エンジン、ボディー、ADASと全く異なる特性のフィールドに次々と飛び込み、常に未知の条件に向き合い、原理原則に立ち返りながら最適解を探し続けてきました。その結果、技術力は高まり続けている実感があります。一つの成功体験に甘えられないからこそ、毎回の設計が学びの連続で、技術力が向上しやすいのです。
デンソーなら、要素技術の研究から製品企画、ウエハやパッケージ製造に至るまで、一貫して携われる面白さもあります。ASICと向き合う生活は、成長の機会が絶えず訪れる日々であるといえます。挑む価値がある、技術者冥利に尽きる仕事です。
垂直統合の体制を活かし、高い視座を持ち製品開発に挑める
これまでのキャリアの中でも特に大きな転機となったのが、スマートキー向けの無線通信回路プロジェクトです。「製品リーダーとして任せたい」と期待をかけていただいての挑戦でした。
当時の私は、チームを率いた経験はなく、さらに、無線通信回路は部署全体としてもほぼ経験がない分野。参画した当初は戸惑いもありましたが、まずは専門書を読み込み地道に知識を付けるところからスタートしました。独学に加えて他部署の専門家からレクチャーを受け、知識を積み上げながらメンバーと協力し、丁寧に設計を進めていきました。
試行錯誤を重ね、ようやく試作品が完成し、納品先であるシステム部門で評価を受けました。しかし、待ち受けていたのは想像以上に厳しい現実でした。事前の検証では問題がなかったにもかかわらず、評価を行う環境では想定外の動作が起きてしまい、狙い通りの結果が得られません。このままでは製品化に進むことはできず、原因究明と抜本的な改善が求められました。
そこで私たちは、システム部門の現場に入り込み、評価環境でデータ収集をしながら分析を進めることにしたのです。デンソーは半導体だけでなく、車載ECU(電子制御ユニット)まで社内で一貫して開発しています。そのため、電源特性やノイズの伝わり方など、車両環境で起こる多様な現象への知見が豊富です。無線通信回路単体では気付けない事象も、システム部門の担当者と同じ波形を見ながら議論することで、その場で仮説検証ができる。
部品単体ではなく、「自動車全体でどう動くか」という視点を持つことで、原因特定も改善の精度も格段に上がります。システム部門との密な協働を通じて、ボトルネックの発見と解消がスピーディーに進み、開発を前に進めることができました。
デンソーが持つ垂直統合の強みがあってこそ乗り越えられた壁だったと感じています。その後、量産に向けた目処を立ててから後輩に引き継ぐことができたのも大きな達成感として記憶に残っています。
未知の領域に挑むときこそ、原理原則に立ち返ることが何より重要であること。そして、課題に直面したときに部署の垣根を越えて助け合える環境や、車両全体を見据えた議論ができる垂直統合の開発体制が、どれほど強力な支えになるか身をもって体感したプロジェクトでした。こうした経験を通じて、私は技術者としてもリーダーとしても大きく成長できました。
車載領域にとどまらない発想で、新たな価値を創造していく
自動車業界は今、大きな転換期を迎えています。電動化・知能化が一気に加速し、クルマを取り巻く技術の前提が変わりつつあります。私が所属しているアナログデバイス部門は、これまで“お客さまから依頼されたモノをつくる”ことを中心に事業を展開してきました。しかし、そのモデルだけでは市場の変化に十分対応できない可能性があります。そこで現在、部門として力を入れているのが新規分野の開拓です。
私は、これまで担ってきた製品開発と並行して、新しい領域に踏み出すプロジェクトに参画しています。企画やマーケティングといった上流工程に携わりながら、「完成車メーカーがどのような半導体を必要としているのか」「次世代の車両アーキテクチャーでは何が価値になるのか」といった議論を進めているところです。システム部門をはじめ、関連部署と何度も議論を重ねる中で、「デンソーがどんな強みを持ち、どんな領域なら勝負できるのか」を模索しています。
視野を広げる中で強く感じているのが、非車載領域への貢献の可能性です。たとえば、私たちが長年磨いてきた高信頼性のIC技術は、データセンターや産業機器、ロボティクスのような分野でも価値を発揮できると考えています。さらに、チップレットやセンサー統合といった“技術の掛け合わせ”によって、新たな市場を切り拓ける手応えも感じています。
クルマと社会インフラがシームレスに繋がる未来では、車載と非車載の境界はますます曖昧になり、必要とされる技術も大きく重なっていくでしょう。そうした中での挑戦は、結果的に社会課題の解決にも繋がるはずです。交通事故ゼロ社会の実現に向けたセンシング技術や、電動化に伴う電源の高効率化、スマート社会を支える堅牢なインフラづくりなど、半導体が担う役割は更に広がります。
そうした今だからこそ、これまでの延長ではなく、自ら価値をつくりにいく姿勢が必要だと考えています。新しい市場に挑むことは簡単ではありませんが、その先には、より広い世界に安心安全を届けることができる可能性があるはず。これからもデンソーの強みを活かしながら、技術者として力を付け、より一層の社会貢献を実現していきたいです。
これから仲間になる方へ



















一つひとつの製品開発が、社会課題の解決に繋がる
私たちのモノづくりは、社会の“困りごと”が起点です。だからこそ、どの製品においても、社会の未来を変える可能性を持っています。
交通事故死亡者ゼロの実現やスマート社会の推進など、貢献できるテーマは多様。
技術者として社会的意義のある仕事がしたい方には特におすすめしたい環境です。