Interview

新美
職種:営業技術
部門:営業技術部門
専攻:大学院 工学研究科 応用化学専攻
理系の素養を武器に、専門領域を越えて未来のモビリティをデザインする
大学院では応用化学を専攻し、植物油から燃料成分を精製するための無機触媒の研究に取り組んでいました。大学院までの研究を通して、理系の学びの本質とは、特定の知識を蓄えることだけでなく、“未知の事象を理解する手法を体に染み込ませる”ことだと考えていました。そのため、専門とは異なる自動車業界へ飛び込むことに自然と迷いはありませんでした。
就職先としてデンソーを選んだのは、世界トップクラスの技術力を持ち、モビリティの未来を全方位から支えられるフィールドがあることに魅力を感じたためです。
現在の仕事では、電力変換器のパワーエレクトロニクス・車両の熱マネジメント、電子工学に至るまで、専門外の高度な技術議論が日常的に行われます。ここで真に活きているのが、学生時代に数学・物理・化学といった基礎科目を一通り履修し、論理的な思考プロセスを叩き込んできた経験です。
私の場合、触媒という化学的なアプローチで転換効率を追求していましたが、その過程で学んだ無機化学や物質の反応機構といった基礎知識は、分野こそ違えど最新のEV開発における“熱のコントロール”や“エネルギー変換”の理論を理解する際の強力な土台となっています。基礎的な原理を知っているからこそ、新しい技術用語や技術分野に直面しても、抵抗感を持つことなく「これはあの物理法則の応用だな」と、既存の知識と結び付けて構造的に理解することができます。
理系をバックグラウンドに持つ方にとって大きなアドバンテージとなるのは、この“技術に対する抵抗感のなさ”です。難解な議論や技術資料を前にしても、それを壁と捉えるのではなく、パズルを解くように“理解すべき対象”として向き合える。抵抗なく新しい知識を吸収し、自らの血肉にしていける学びの姿勢こそが、変革期にある自動車業界で働くうえで、何物にも代えがたい武器になるのです。
専門分野という枠に自分の可能性を閉じ込める必要はありません。強固な理系の基盤さえあれば、どんなに領域の異なる最先端技術であっても、最短距離で本質を掴むことができます。その確固たる土台があるからこそ、社内の百戦錬磨の技術者たちとも対等に渡り合い、顧客に対して「デンソーの技術をどう価値に変えるか」というビジネスの絵を描くことができるのだと、日々強く実感しています。
理系出身としての視点を活かし、技術を“社会の価値”へ翻訳する
現在、私は“営業”という肩書きで仕事をしていますが、その実態は理系の素養とビジネスセンスを掛け合わせた“ビジネスプロデューサー”に近いものです。完成した製品を売るにとどまらず、技術の裏付けを持って顧客のニーズを深掘りし、社内の開発部門と連携して“未来のモビリティ”の仕様を形にしていく。その役割は非常に多岐にわたります。
1つ目の業務は、先行開発の提案です。お客さまである完成車メーカーの技術開発部門に対し、まだ世の中にない次世代EVやモビリティのあり方をゼロベースから提案します。「次世代のモビリティには、どんなエネルギー管理が最適か」「バッテリー制御はどうあるべきか」など、要件が定まる前の真っ白な状態から議論する際、理系的な基礎知識があることは絶対的な強みになります。
お客さまが描くビジョンから期待を捉え、デンソーならではの知見や技術を掛け合わせ提案することで、それを実現する技術へと昇華させていく。このプロセスにおいて、「技術的に実現可能か」「効率の限界が存在するかどうか」を瞬時に理解できる理系の感覚があるからこそ、顧客の期待を超える、実現性の高い提案が可能になります。
2つ目の業務は車両企画部門への提案です。完成車メーカーが持つ各ブランドにおいて、「どんな乗り味のクルマにしたいか」を掲げるチーフエンジニアに対し、デンソーが持つ空調、ADAS(先進安全技術)、PCU(パワーコントロールユニット)といった多岐にわたる技術をパッケージングして提案します。ここでは、部品単体の知識にとどまらず、車両全体のシステム構成を俯瞰して考えることで最適解を導き出す能力が求められます。
たとえば、ある機能を載せるために生じる熱の課題を、別のシステムの冷却能力でどうカバーするか。複数の技術要素を一つのシステムとして構築し、車両全体のパフォーマンスを最大化させる提案は、まさに理系的な構造化能力の見せ所です。
そして3つ目は、それらの技術を“体感の場”へと落とし込む活動です。新製品の展示会や試乗会の企画が典型的な例と言えるでしょう。たとえば、極寒の北海道にあるテストコースで、技術の優位性を実際に示します。ここでは単に性能の良さをアピールするのではなく、“技術が提供するモビリティとしての価値”や"この環境下でこの数値が出る理由”を、実車で体感してもらったうえで、物理法則や実証データに基づいて論理的に説明し、納得感を生み出すプレゼンテーションを行うことが重要です。
技術の凄みを実車での体感と合わせて数値的な根拠を持って語ることで、経営層や技術部門幹部からも深い信頼を得ることができるのです。
開発職が技術を“深く”掘り下げるプロであるなら、私たちは技術を“広く”繋ぎ、ビジネス価値へと変換するプロです。社内の技術者とは専門用語でディープに語り合い、顧客にはその技術がもたらす未来を分かりやすく説く。技術を共通言語にしながら、異なるレイヤーの人々を繋ぎ、ダイナミックにプロジェクトを動かしていく。一つの分野に閉じこもらず、多種多様な技術を組み合わせて新しい価値をプロデュースできるのは、この仕事ならではの面白さです。
正解のない問いに挑み、周囲を巻き込む熱意で道を切り拓いた経験
私にとって大きな転機となったのは、入社2年目の時でした。FCシステム(燃料電池システム)の他販という、社内でも前例のないプロジェクトの担当を任されたのです。当時は、お客さまとデンソーの間でも、まだ「どう進めるべきか」という考え方が固まりきっていない状況でした。
20年以上のキャリアを持つベテラン層や、社内の室長・課長クラスといった経験豊富な方々を前にして、2年目の私は「どうすればいいのか」という案をつくり出すことに非常に苦戦していました。正直なところ、経験のなさを理由に、どこかで「自分にはまだ無理だ」と逃げ腰になっていたのかもしれません。そんな私の姿勢を見て、当時の上司はあえて真正面から厳しい言葉を投げかけてくれました。
「この仕事はプロとしての責任が伴うものだ。もし本気でやり遂げる覚悟が持てないのなら、無理に背負わせるわけにはいかない。今の実力に見合った、負荷の低い仕事に切り替えることもできるが、どうする?」
この問いかけは、私自身の意志を問うものでした。ここで引き下がったら一生後悔する。そう直感した私は、退路を断ってなりふり構わず動くことに決めました。まず変えたのは、“わからない”ことを前提に周囲に飛び込むことです。
「どうすれば顧客のやりたいことを実現できるか」を必死に考え抜き、とにかく自分なりの案を文字や図で表現し、周囲のスペシャリストにぶつけ続けました。当初は多くの指摘を受けましたが、必ず真剣に耳を傾け、進むべき方向を示してくれました。何度も修正しては仕上げていくプロセスを繰り返す中で、バラバラだった課題が一つずつ整理され、徐々に“混沌とした状況を構造化し、考え抜く能力”が自分の中に根付いていくのを実感しました。
お客さまに寄り添い、本来のやりたいことを実現するために、説明しながら落としどころを見付け出していく。そのプロセスを完遂したとき、社内には強固な協力体制ができあがり、顧客からも「あなたに任せてよかった、一緒に仕事ができて助かった」という言葉をいただくことができました。
この経験を通じて気がついたのは、たとえ前例のない難しい課題であっても、自ら周囲を巻き込んでいく熱意があれば全力で支えてくれる懐の深さがデンソーにはあるということです。そんな環境の下、大きな壁を乗り越えた経験があったからこそ、私は大きなプロジェクトを一人で回し、新しい仕事を自ら生み出せるまでの自信を手にすることができたのだと確信しています。
技術を繋ぎサプライヤーの枠を超え、次世代の社会システムを創り出す
私は今、これまでの経験をさらに広いフィールドへと繋げ、デンソーの中で新たな事業を立ち上げたいと考えています。今までのプロジェクトで培った知見は、私の大きな財産です。この知見を武器に、今後は国内だけではなく海外メーカーに対してもアプローチを行い、自分の提案がグローバルな舞台でどこまで通用するかを試していきたいと考えています。
しかし、私の見据えるゴールは既存のビジネスの延長線上にはありません。部品の提供というこれまでのサプライヤーの枠組みを超え、モビリティを起点とした社会システムそのものをデザインするような、新しい事業を生み出すことに挑戦したいです。
私が考える“社会をデザインする”とは、モビリティのハードウェア性能を競うことではなく、モビリティが社会に溶け込むことで生まれる新しいインフラとしての価値をゼロから構築することです。
たとえば、自動運転技術を単なる“運転の自動化”として捉えるのではなく、移動の概念そのものを変えるサービス事業として捉えると、見え方が変わってきます。過疎地における高齢者の自由な移動を支えるオンデマンド交通や、物流の完全無人化によるラストワンマイル問題の解消。これらはクルマ単体の技術では完結しません。道路インフラ、自治体のシステム、そして利用者の動線を繋ぐ仕組みが必要です。
私は営業の立場から、社内の多様な技術を統合し、外部パートナーとも連携しながら、こうした社会課題を解決したいのです。
デンソーは、パワートレインから空調、先進安全、そしてソフトウェアまで、モビリティを構成するあらゆる領域で世界トップクラスの技術を持っています。これらをバラバラの部品として売るのではなく、社会の不便を解消するためのソリューションとして組み合わせる。有機的に機能する“システム”として提案することこそが、新事業を立ち上げる上での最大の武器になります。
「この技術を使えば、街の景色はこう変わる」「この仕組みを導入すれば、人々の生活はこれだけ豊かになる」。そんな、社会のOSを書き換えるようなダイナミックな構想を形にし、世界に提案していく。プロジェクトを一人で回せるようになった今だからこそ、自らが主導してデンソーの次の柱となる事業を創り出したい。その挑戦の先に、まだ誰も見たことがない新しいモビリティ社会を実装することが、最大のモチベーションになっています。
これから仲間になる方へ



















技術を価値へと変える挑戦を共にしよう
理系の素養は、未知の領域を切り拓く武器になります。専門分野に縛られず、論理的思考を土台に“技術を社会の価値へと変える”挑戦を一緒に楽しみませんか。
主体的な意志があれば、若いうちから主役になれる環境がデンソーにはあります。
熱意ある皆さんと、モビリティの未来をデザインできる日を心から楽しみにしています。