納得できるまで分析しつくすデンソーの技術者に憧れて
昔からクルマが好きで、学生時代にはクルマ関連のクラブ活動をしていました。仲間たちと一緒に、サーキットで競技車両を走らせてタイムを競ったのは良い思い出です。デンソーに興味を持ったのも、そのクラブ活動がきっかけでした。競技車両に用いられていたデンソーの部品が真夏の酷暑でも壊れず、「過酷な環境に長時間耐えられるのはなぜだろう?」と気になったのです。品質の高い製品がいったいどんな会社で生み出されているのか知りたくなり、インターンシップに応募しました。
インターンシップで出会ったのは、“現地・現物・現実”を重視し、理屈が分かるまでとことん深掘りする技術者たちでした。実験・仮説・検証というサイクルをシステマティックに重ね、「こういう理屈でこうなったんだ」と納得できるまで分析している姿を見て、学生ながらに感動したのを憶えています。起きた現象一つひとつに対して、現物を見ながら丁寧に分析していく姿勢。それこそが、丈夫な製品に繋がっているのだと感じました。
デンソーへの就職を決めたのは、インターンシップで出会った技術者の姿に憧れたからです。また、人財育成に力を入れている点も決め手になりました。先輩社員が若手社員に寄り添って丁寧に指導していたので、「ここでなら着実に成長できそうだ」と思いました。
工業化技術を農業に活用し、多様な働き手が活躍できる社会へ
私が所属しているフードバリューチェーン部門では、これまでデンソーが培った工業化技術を農業に活用し、人と機械が共に働くことで、多様な働き手(女性・高齢者・農福連携)の活躍の場を創出することを目指しています。具体的には、オランダのセルトン社と共にデンソーアグリテックソリューションズという会社を立ち上げ、日本各地で大規模な農業用ハウスの建設を進めています。私たちが取り組んでいるのは、ハウスに導入する自動収穫機や自動搬送システムの開発です。“収穫”や“搬送”といった重労働が自動化できれば、農家の負荷は大きく軽減すると考えています。
このプロジェクトの中で、私は大規模施設園芸向けミニトマト自動収穫機と自動搬送システムの開発を担当しています。生産技術者として、農場で使われるシステム製品の仕様づくりや、生産工程の提案をするのが主な役割です。自動収穫機は、現在製品化に向けて耐久評価などをしており、既に三重県で農場検証を行っています。実証農場に対して工程改善の提案をするのも私の重要な仕事。今後は、農業先進国であるオランダに収穫機を送って実際に使ってもらい、多角的なフィードバックをもらうことでさらに改善を重ねていきたいです。
農場に足を運び、人と作物に触れて学んでいく
これまでの仕事を振り返ると、生産技術者になって、工場や生産ラインを俯瞰する姿勢が身に付いたと感じています。大学時代の研究では1つの固有技術を徹底的に突き詰めていましたが、生産ラインとなると何十個、何百個もの設備が集まる集合体を扱うことになります。たとえば、ある生産ラインの生産時間を短くしたい場合、一部の工程だけ短縮できても、他に時間がかかる工程があれば、トータルは変わりません。生産ライン全体を見て、改善すべき工程すべてに手を打って初めて効果が出るのです。工場となるとさらに多角的な視点が求められ、抱える在庫量や物流動線にも目を向ける必要があります。この仕事を通して、全体を俯瞰した上で必要な改善策を見極められるようになりました。
また、事業開発や営業といった、より農家のお客様に近い仕事も経験させてもらっています。職種の枠にとらわれず、幅広い業務に携われるのは新事業ならではの面白さです。農場に出向き、ときに苦労する作業を体感しながら、お客様への具体的な提案を行ってきました。丸一日かけて生産工程の中身を確認・分析して、削減できそうな工数を発見し、生産性向上に向けた改善提案をしたこともあります。お客様から「そうすればいいんだね!」と、喜びの声をいただいたことが心に残っています。笑顔を間近に見たことで、世の中に貢献できていることが肌で感じられました。
一方で、“食品”を扱う農業の世界ならではの難しさもあります。デンソーの工場の常識がそのまま当てはまるわけではないため、現場に足を運ぶまで気付けなかったことや、お客様から教えていただいて知ったことも多くありました。私たちは農業界では新参者です。今後も常に謙虚な姿勢で、お客様の現場から学んでいきたいと思います。
型にはまらない発想で、世界に認められる製品をつくりたい
私たちのチームには、型にはまらない発想、活気のある空気感、経験やスキルにとらわれず新しいことに果敢に挑む姿勢など、新事業らしさがあふれる特徴があります。自由で柔軟な考え方ができるのは、普段から植物という“生き物”を相手にしているからかもしれません。工業製品であればバラつきなくつくることができますが、植物には当然ながら個体差があります。トマトが工業製品のように最初からきれいに並んで実っていたら楽なのですが、違いがあるからこそ面白い。それは人間も同じで、一人ひとり違うからこそ面白いのだと思います。
私たちチームの目標は、デンソーの自動化技術を活用して、農業現場に笑顔を増やすこと。農場に足を運び、多くの農家の方と接することで、その想いが一層強くなりました。
加えて、日本だけでなく海外展開も見据えています。ヨーロッパ、特にオランダは農業技術革新をリードする先駆者です。実際、日本の農場で技術導入する際は、多くの方がその新しさに驚いてくれますが、オランダで同じことをしてもあまり驚かれません。それくらい技術革新が進んでいて、競争も激しい場所です。その中で「デンソーが一番すごい」と言わせたい。「オランダの人たちよりももっと素晴らしいモノをつくってみたい」という気持ちがあります。オランダから必死に学び、食らいついて、共に新しい価値を生み出していきたいです。