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農業

アグリテックへの新たな挑戦──世界の農業を変え、笑顔を増やすために

伊藤 恭平Kyohei Ito

FVC事業推進部

  • 大学工学研究科 機械物理工学専攻
  • 2011年デンソー入社
  • 2011年サーマル製造3部(豊橋製作所)
  • 2014年生産技術部(本社) ※社内交換留学
  • 2014年サーマル製造3部(豊橋製作所)
  • 2018年~現在FVC事業推進部

業務内容

FVC事業推進部はどんなお仕事ですか?

FVC事業推進部では、これまでデンソーが培った工業化技術を農業に活用し、人と機械が共に働くことで、多様な働き手(女性・高齢者・農福連携)の活躍の場を創出することを目指しています。オランダのセルトンという会社とともに“デンソーアグリテックソリューションズ”という会社を立ち上げ、大規模な農業用ハウスを日本各地に建てているところです。我々はそこに導入する新しい技術として、農場の中で重労働の作業となっている「収穫」や「搬送」の負荷軽減に向け、自動収穫機や自動搬送システムの開発を進めています。

その中での伊藤さんの役割

農業領域の生産技術者として、農場で使われるシステム製品の仕様づくりや、生産工程の提案をするのが私の主な役割です。具体的には、大規模施設園芸向けミニトマト自動収穫機のシステム開発や自動搬送システムの開発を担当しています。農業用自動収穫機は現在製品化に向けて耐久評価等をしており、既に三重県で農場検証を進めています。今後は農業先進国であるオランダに自動収穫機を送り、オランダの農場で実際に使ってもらって、さらに改善を重ねていこうと思っています。

相関図

これまでで一番印象的だったお仕事は?

新事業だからこそ、技術職/事務職の枠にとらわれず、事業開発や営業といった、よりお客様に近い仕事も経験させてもらっています。その中で、実際に農業の現場へ出向き、ときには苦労する作業を体感しながら、お客様の農場に対する具体的な提案を行ってきました。印象的だった経験としては、お客様の農場で、丸1日かけて生産工程の中身を確認・分析して、削減できそうな工数などを発見し、生産性向上に向けた改善提案をさせていただいたことです。その際、「そうすればいいんだね!」とお客様から直接喜びと感謝の声をもらい、世の中への貢献を肌で感じることができました。一方で、”食品”を扱う農業の世界では、デンソーの工場の常識がそのまま当てはまらない部分もあり、お客様から学ばせていただくことも数多くありました。デンソーは農業界では新参者であるため、上から目線になることなく、常に謙虚な姿勢でお客様の現場から学ぶことを大切にしています。

働き方

職場環境や雰囲気はどんな感じですか?

新事業というだけあって、型にはまらない発想、活気のある空気感、それぞれが持つ経験やスキルにとらわれず新しいことに果敢に挑戦していく組織風土があります。それは、”生き物”を相手にしている点が大きいかもしれません。工業の製品であればバラつきなくつくることができますが、植物には当然個体差があります。人間が一人ひとり違うように、植物の苗も一つひとつ違う。トマトが工業製品のように最初からきれいに並んでいたら楽なんですが、違いがあるからこそ面白い。それは人間も同じですね。

ワークスタイルについて

月に2回程度は現場に出向き、ミーティングや調査を行っています。3歳と1歳の子どもがいるため、週2日の在宅勤務を活用することで、共働きによる子育てとの両立を図っています。

スケジュール表

休みの日の過ごし方

家族4人で子どもの成長をみながら、アウトドアで過ごす時間を大切にしています。子どもたちと妻の実家の農地で野菜の収穫などをすることもあります。ちなみに仕事では土を使わない農場を主体としていますが、プライベートでは土を使う農業をしています。より生産にばらつきが発生する世界なので、そういう意味では、仕事では味わえない難しさや苦しみを感じることができていますね。笑

就職活動

就職活動はどんな風に進めていましたか?

もともと車が好きで、自動車業界を志望していました。デンソーを知ったきっかけは、大学のクラブ活動です。競技車両をサーキットで走らせてタイムを競ったりしていたんですが、そこで使われるデンソーの部品は、真夏の過酷な暑さの中で長時間使っても壊れなくて、『これはどうしてなんだろう?』という疑問から、デンソーの製品、そして会社に興味を持ちました。品質の高い製品がどんな会社で生み出されているのか詳しく知りたい、実際に現地で体感してみたいと思い、インターンシップに応募しました。

どうしてデンソーを選んだのですか?

インターンシップに参加し、“現地・現物・現実”で理屈をもって皆が納得するまで深堀りをする技術者たちに出会い、自分もそうなりたいと感じました。実験・仮説・検証というサイクルをシステマティックに重ねながらも、その上で「こういう理屈でこうなったんだ」とわかるまで分析しているのを見て、学生ながらに感動したのを覚えています。起こった現象一つひとつに対して、現物を見ながら丁寧に分析をしているから、あれほどまでに丈夫な製品を生み出せているのだろうと実感しました。人財育成にも力を入れていて、若手社員が納得できるまで懇切丁寧に寄り添っている先輩社員の姿勢を感じられたことも、大きな決め手となりました。

仕事で役立ったスキル、入社後に身に付けたスキル

生産技術者になって、工場や生産ラインを”全体俯瞰”するスキルが鍛えられました。大学時代の研究だと、1つの固有技術を徹底的に突き詰めることをしていましたが、工場や生産ラインとなると何十個、何百個もの設備が集まる集合体を扱うことになります。たとえば、ある生産ラインの生産時間を短くしたいとなった場合に、一部の工程だけ時間を短縮できても、他に時間が長い工程が存在すれば、トータルの生産時間は変わりません。生産ライン全体を見て、改善すべき工程すべてに手を打って初めて効果が出ることになります。さらに、工場となると、そのひとつ上の視点が求められ、工場が抱える在庫量や物流動線にも目を向ける必要があるなど、より多角的な視点が求められます。そういったスキルを、生産技術の仕事をする中で培うことができましたね。

キャリアアップ

これから頑張っていきたいこと

農場にデンソーの自働化技術が導入されることで生産が効率化され、農家の方の笑顔があふれる現場をつくっていきたいです。特に海外に向けても、しっかり展開していきたいと思っています。実はヨーロッパ、特にオランダは世界の先駆者となって農業技術革新をリードしています。実際、日本の農場で技術導入する際は多くの方たちがその斬新さに驚いてくれますが、オランダで同じことをしてもあまり驚かれません。それくらいレベルが高く、競争も激しい世界です。でもその中で「デンソーが一番すごい」と言わせたい。“打倒オランダ”ではないですが、オランダの人たちよりももっと素晴らしいものをつくってみたいという気持ちで、共に価値を創りながら、必死に学び、食らいついていきたいと思っています。

最後に、就職活動中の方にメッセージを!

学生時代に学べることは、ほんの一握りだと思います。社会で数多くの人々と出会い、さまざまなことに興味を持ち、自らどん欲に前向きに学んでいく姿勢を大切にしてください!