Interview
互いを理解しチームで解決できる組織を。
思っていることを正直に本音で話すこと、受け容れることの大切さ
Interview
思っていることを正直に本音で話すこと、受け容れることの大切さ
サーマル製造2部 将来工場推進室の浅野 和恵。3人の子どもを育てながら、課長として20名以上のメンバーを束ねるなど、充実したキャリアを形成しています。仕事と育児の両立に不安を抱えながらも周囲の理解・協力を得ながら乗り越えてきた浅野。育休前後の働き方や考えの変化、今後の展望などを語ります。
2005年に入社した浅野。2022年12月現在は、サーマル製造2部 将来工場推進室に所属しています。
浅野 :「将来工場推進室は、当部の“夢工場”構想と、実現のための活動を推進する部署です。中でも私がいるデジタル推進課では、西尾製作所内の4つの工場を対象に工場DXを展開しています。
具体的には、工場内のアナログな仕事をデジタル化することで効率化したり、IoTを活用したりすることで、工場の働き方そのものを変えていくことを推進しています。工場で勤務する方にとってより働きやすい環境をつくることが私たちの目指すところ。工場のニーズを引き出し、社内外の施策を参考にしながら進めています」
2021年の1月からデジタル推進課の課長を務める浅野。約20名のメンバーを率いています。
浅野 :「マネージャーとして重視しているのは組織としての成果と個人の成長。メンバーの個性なども考慮しながら能力を伸ばし、それをいかにチームの成果につなげていけるかを常に考えています」
着実にキャリアを形成するかたわら、3人の子どもを育てる母でもある浅野は、当時、大きな不安を抱えていたと振り返ります。
浅野 :「職場は男性がほとんどで、周囲に育児休業を経験した方がいなかったんです。相談できる人が近くにいなかったのと、復帰後の姿を想像することが難しかったので、仕事と育児とを両方できるのだろうかと当時は不安がありました」
一度目の育児休業からの復帰後は自分が置かれている状況の共有の仕方がわからず、ひとりで踠いたと話します。
浅野 :「子どもが小さいと働く時間が制約されることは確かにあるのですが、『育児があるからできない』というのは違うと思っていたんです。その想いが強いばかりに、職場に家庭のことをどこまでどう伝えていいのか、周囲をどう頼っていいのかがわからなくて。子どもが熱を出して早退するときなども、すごく後ろめたい気持ちがありました。
また、仕事で家にいない時間があることで、子どもが愛情不足になるのではないかという不安もありました。仕事と育児がうまく両立できず、自分が体調を崩したことも。それでも、すべて自分がやらなければと思い込んで、誰にも『つらい。助けて』とSOSを発信することができなかったんです」
浅野は、2人目と3人目の出産・育児休業を続けて取得します。
浅野 :「2人目の出産・育児休業のタイミングで、私はキャリアを一度、横に置き、育児に専念しようと思ったんです。復職後にしっかり働くことができれば、キャリアは必ず巻き返せると思いました」
浅野は二度目の職場復帰後、時間に追われないよう生活と心の在り方を見直したと言います。
浅野 :「まず取り組んだのが、家事を減らすこと。ロボット掃除機や洗濯乾燥機など、便利家電を積極的に導入したり、朝ごはんには前日の夕食の残りものを取り入れたり。家事を頑張りすぎないようし、疲れた日は手も抜いたり息抜きしたりすることも、自分の心のゆとりのためと正当化するようにしました」
仕事の面でも同様に効率化を徹底したと言う浅野。優先順位や価値観、仕事に対する向き合い方が大きく変わったと言います。
浅野 :「子どもが保育園に通っていたころはお迎えに行く必要があったので、どうしても現場でやる必要がある仕事とそうでない仕事をはっきり分けて、現場での仕事は早めに切り上げて、在宅勤務で仕事をしていました。
納期や優先順位、仕事の必要性を意識し、以前と同じアウトプットを出すためにはどうすればよいかを常に考えるようになったことで、ムダや非効率な仕事がよく見えるようになってきたと感じます。『とりあえずやる』ではなく、『それって本当に必要か?』と見る視点が変わってきました」
また、ひとりで抱え込まず、頼ることも強く心がけてきたと言います。
浅野 :「“皆で子どもを育てる”という発想のもと、子どもの習い事の送迎や行事への参加、突然の体調不良を起こしたときなど夫や義父母に相談するようにしました。仕事と育児を両立する上で重要なのは、ひとりでなんとかしようとするのではなく、周りに相談し、“チームで”解決すること。
仕事においては、たとえば、普段から自分の業務をメンバーと共有しておくことで、いざというときに仕事が滞りなく進むようにしています。いまでも、そうやって家族だけでなく職場にも協力してもらっています。周りの皆さんの協力があってこそ、今の私がいるので、いつも感謝の気持ちでいっぱいです」
仕事と育児のバランスをとるためには、周囲の理解や協力を得ることが何より大事だと話す浅野。社内に在宅勤務制度ができたときも、真っ先に上司に相談したと言います。
浅野 :「製造現場の職場には女性が少なく、在宅勤務制度を活用することに慣れ親しんでいない環境の中、上司に相談することは勇気が必要でした。ですが、上司も同じ世代のお子さんがいることもあり、すぐに理解してもらうことができました。
とは言え、周りには在宅勤務制度を活用している人が少ない。家で仕事をすることは本当に問題がないか、子育てをしながらでも仕事の効率を上げることができるか、周りの目は……。 気になることを上司にいつも相談しました。その都度、向き合ってくれて、おかげで周りの理解や協力を得ることができ、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができています」
二度目の復帰以降の数カ月はなかなか感覚が取り戻せず、苦労した場面もあったと言う浅野。それでも、焦らず、仕事に一つひとつ向き合ってきました。
浅野 :「『育児があり時間は限られていますが、仕事はきちんとやります』 と積極的に伝え続けてきました。育児と両立しながらも、いろんなことにチャレンジして成長したかったので、気をつかわずに仕事の機会をどんどん与えてほしいことを、ことあるごとに伝えていたと思います」
そんな想いを上司は理解し、浅野は大きな仕事をいくつも任されていきました。とくに印象に残っていることがあります。
浅野 :「部署での活動の成果を社長や経済産業大臣に報告する重要な役目を与えてもらいました。子育てで時間の制約がある中でも、このような責任のある仕事を任せてもらえて、とてもやりがいを感じましたし、仕事がさらに楽しくなりましたね。本当に嬉しかったです」
今後は、ひとりで抱えるのではなく、皆で支え合いながら、安心して働き続けられる組織づくりをしていきたいと言う浅野。次のように続けます。
浅野 :「いざというときに助け合うためには、メンバー同士が普段から相手の状況をプライベートも含めて理解しておくことが大切です。メンバーが抱えている問題はさまざま。家族を介護している人もいるだろうし、もしかしたら大切な誰かが急に病気になる可能性もあります。
万一のときに女性も男性も関係なくサポートし合えるような組織にしていくためにも、普段から声をかけ、お互いに寄り添ったコミュニケーションができる環境づくりが大切だと思っています」
会社生活はまだ折り返し地点の手前。最近は、子どもたちが成長して子育てが落ち着いてきて、気持ちに余裕も生まれてきたので、これからいろいろなことに挑戦するのが楽しみだと話します。
浅野 :「これまでは子育てに忙殺されていましたが、余った時間をどんなふうに使えば周りの皆さんの役に立てるだろうかと、ようやく考えられるようになってきました。まだ何も決めていませんが、誰かを笑顔にしたり、人の幸せに貢献できたりするような活動ができたらいいですね」
また、女性が働きやすい環境づくりにも意欲的です。
浅野 :「私はサーマル事業部の生産技術領域ではじめての女性課長なので、先頭に立って切り拓いていかなければならない立場。自分が我慢したり、遠慮したりしていたら、きっと次に続く方が同じ想いをする可能性があると思っています。私が率先して、『女性が当たり前に活躍できる環境』をつくっていきたいと思っています」
自ら周囲と連携することで、仕事も子育ても存分に楽しめていると言う浅野。技術者、女性、そして母として、より自分らしい働き方、生き方を模索しながら、これからも挑戦を続けます。