Interview
個人と組織のWillをつなぐ、本気の人事改革。
デンソー人事トップが抱く実現へのこだわり
Interview
デンソー人事トップが抱く実現へのこだわり
デンソーは現在、人と組織のビジョン「PROGRESS」を掲げて人事改革に取り組み中。社員個人の幸せと、会社の大義をつなぐことで、企業の実現力を高めようと挑戦しています。社員17万人を相手に本気で改革を進める、総務人事本部 執行幹部の原 雄介。人事改革の指揮を執る原の、熱い想いやビジョンに迫りました。
デンソーが掲げている、人と組織のビジョン、その名も「PROGRESS」。これは、プロフェッショナルの「プロ」と、進化の「プログレス」のふたつを掛け合わせた言葉です。
原:「自動車業界にとって100年に一度の変革期の中で、産業構造や社会の価値観が大きく変わった昨今、経営の中心に人的資本を据えていかないといけないという課題感がありました。そんな中、人と組織のビジョンとして作ったのが『PROGRESS』です。『PROGRESS』では、社員一人ひとりの目指す姿を『実現力のプロフェッショナル』と定義し、人と社会の幸せのために新しい“できる”を実現するプロ集団になろうと謳っています」
デンソーは、実現力を「量産実現力」と「事業実現力」の二つに分けて考えています。
原:「新しい事業や価値を創造する力を『事業実現力』と呼んでいます。意味のある課題を形成し、さまざまなパートナーと連携していく力で、今後ますます必要になると考えています。さらに、それを世の中に普及していく力も同様に必要で、それを私たちは『量産実現力』と呼びます。そんなデンソーの二つの実現力を、『PROGRESS』によって一層高めていこうと考えています」
実現力のプロフェッショナルになるための第一歩となるのは、社員一人ひとりの自律です。
原:「社員には『情熱で自己新記録に挑むプロ』になってほしいと思っています。働く目的が、肩書きや昇進のためではなくて、自分らしく成長するため、働きがいがある仕事をするため、という風に変えていきたい。そこで、個人のキャリア自律を促すために、3本柱でサポートをしています。
1本目の柱は、『なりたい自分を描く』ためのサポート。自分のやりたいことを自分の言葉で表現することが何より大切だと考えていて、それを上司・部下の対話を通じて見つけ出してもらうためにキャリア面談の機会を設けています。
2本目の柱は、『視界を良好にする』こと。なりたい自分を描こうとしても、デンソーにどんな仕事があるか、どんな働き方の選択肢があるかが見えてこないと暗中模索になってしまう。そうならないようにするために、キャリア実現に必要な情報をオープンにする活動をしています。
そして3本目の柱は、『キャリア実現』のサポート。なりたい自分が見えて、視界が良好になったとしても、それが実現できなければ意味がありません。キャリア実現を支援するために、自ら手を挙げて異動できる公募制度や、若手社員が海外やベンチャー、異業種に挑戦できるトレーニー制度、さらにはスキルチェンジをしたい人のためにリスキリングの機会を設けるなど、さまざまな選択肢を用意しています」
原はさらに、リスキリングについてこう付け加えます。
原:「リスキリングは、会社の都合でスキルチェンジを強いられていると思われがちですが、一番の目的は、個人の成長や市場価値向上につなげるため。たとえばデンソーの代表的なスキルとして、メカ(機械)・エレクトロ(電気)・ソフトウェアがありますが、どれか1つのスキルしか持たない人よりも2つ以上スキルを持ち合わせている人の方が、より力を発揮できるし、市場価値も上がっていきます。
さらに、そういった人財が増えて、社会に新たな価値をどんどん生み出していけるようになれば、それはデンソーにとっても嬉しいこと。個人と会社の想いが重なり合って相乗効果を生み出す、それがデンソー流のキャリア自律の考え方です」
2022年12月現在は人事という立場で、社員をモチベートしている原ですが、実はエンジニア出身です。
原:「エンジニアとしてモノづくりに携わっていたころは、チームの中でいろいろなことを考えて、試行錯誤して、互いに助け合いながら限界を超えてきました。 その中で、“できない”を“できる”に変える経験を何度も味わいました。そこにいる一人ひとりが、『戦略を絵空事にはせず、自分たちの手で実現に変えてみせるんだ』という強い気持ちを持っていました」
しかし原は、現場にいながら、ある課題感を抱えていました。
原:「当時感じていたのは、現場と人事がいまひとつつながっていなくて、人事の提示する経営施策が現場にフィットしていないことでした。たとえば、自分たちが取り組んでいることが会社の施策とマッチしているのか、海外拠点で頑張っている社員の姿を日本の本社は正しく把握できているのか、など不透明なところがありました。だから今、『PROGRESS』の指揮を執るにあたって、いかに人事と現場を繋ぐことが出来るかにこだわっています。
現場と言っても、いわゆる製造現場だけではなくて、研究開発の現場もあれば、エンジニアの現場もあり、我々人事のような現場もあります。現場それぞれで、困りごとややる気スイッチも異なります。多様な現場がある会社だからこそ、人事には、現場のリアルを見る姿勢が求められると思っています」
現場出身だからこそ、現場と人事をつなぐことを使命として感じている原。人事部を任されたときから、その使命感を胸に動いてきました。
原:「私は人事部を任された後、部員たちに『ゴールは現場にあり』という話をしました。どんなにいい構想やビジョンも、現場で運用され、価値につながってはじめて意味を成すものだと思います。なので、新しい人事制度や仕組みを導入することは、ゴールではなくスタート。人事と現場をつなぎあわせるところまでが私たちの仕事だと伝えました」
デンソーが手掛けてきた100を超える“世界初”。そこには100を超えるストーリーとエピソードがあり、社員一人ひとりの小さな“できる”が積み重なっている。さらにその下には、一人ひとりが小さな自己新記録を更新し、自分の限界を超えてきた歴史を持っている。それを知っているからこそ、原は、個人の自律を重要視する「PROGRESS」という戦略にたどり着いたのです。
「PROGRESS」を現場に落とし込むために、コミュニケーションのネットワークを社内に張り巡らせています。
原:「人事と現場をつなげるために大切にしているのは、“対話”です。デンソーは、200を超える部署を有する巨大企業。そんな大きな組織に『PROGRESS』を染み込ませていくためには、毛細血管を張り巡らすかのように各現場とのつながりを作っていかなければなりません。部署を指揮する200人の部長全員と1on1で対話を重ねたり、各組織にいる人事責任者に“人事の仲間”となってもらえるようお願いをしたり。そういったコミュニケーションを繰り返しながら、『PROGRESS』に対する本気度を伝えています。
各現場からあがってくるリアルな意見は、施策のフィードバックにもつながります。
原:「たとえば、『新しい人事制度を適用したいが、現場にフィットするか不安』という課題について各現場と対話すると、『この部分は反対意見がでそう』『この部分は現場の裁量でやらしてほしい』などいった声が出てきます。そういった意見を制度設計に取り込み、何度も何度も軌道修正しながら進めていきます。理想を現実に変えるためには、目をそむけたくなるような実状にも誠実に向きあっていくことが何より重要です」
そんな原は、労働組合との関わりも大切にしています。
原:「現場の一人ひとりとつながるには、労働組合と手を取り合うことが、実現への近道だと考えます。会社のリアルな実態と、労働組合で起きていることをつなぎ合わせるために、労働組合の委員長とは毎週のように対話をかねています。労働組合も会社も、『社員の幸せと、会社の大義の両立・実現』という目的は同じ。その目的のために、異なる立場で役割を果たそうと、心を合わせながら進めています」
毎日の仕事時間の半分くらいを、こういった対話に費やしていると言う原。
原:「ただ、大事なのは単に対話をすることではありません。“本音”で対話をすることです。本音で言い合えるような自由闊達で風通しのよい組織を作っていくことで、一人ひとりの可能性を解き放ち、大きな力を生み出していくことができます。でもそれは、言うは易く行うは難し。そこで私が意識しているのは、まずは自分から本音を言うことです。
たとえば、『相手の立場としては言い出しづらいだろうな』という話題があれば、私から先に『ぶっちゃけ、私自身もやりにくいと思っているんですよ』と言ってあげると、相手も心を開いてくれる。赤裸々に話をしていくことで、心の距離を縮めていくことができるんですよね」
組織と人を変えたいという熱い想いで、丁寧で真摯なコミュニケーションを積み重ね、目指すゴールまで駆け抜けます。
原:「デンソーは『一人の天才がいて、あとは全員その人に従えばいい』という企業ではありません。『チームワークで“できない”を“できる”ように実現するんだ』というカルチャーがあり、グローバル17万人の社員の心にそれが染みついています。現場も、人事も、経営陣も、みんなが同じようにデンソーを大切に思っている。だから、本気でやりたいし、実現できると信じています」
社会環境や価値観が目まぐるしく変化する昨今。デンソーが目指すべき姿も変化しています。
原:「今デンソーは、世の中に新たな価値を提供していくために、事業の幅を広げています。モビリティ・インダストリー・ソサエティの3つの軸で取り組んでおり、『モビリティ』については自動車のみに限定せず、空飛ぶクルマなど、移動に関わるモビリティ全般をスコープとしています。また、材料の生産力の高さもデンソーの強みで、たとえば『半導体』については、半導体メーカーでないにも関わらず車載半導体の売上相当額で世界第5位を誇っています。
このようにさまざまな領域で新しい“できる”を常に追求しているのが、デンソーの特長。だからこそ、社内には色々なことがやれるチャンスがあり、多彩な活躍の舞台が広がっています。自分の意思で、自分が立ちたい舞台を選択できるのは、デンソーで働く上での大きな魅力ですね」
活躍のチャンスが広がる中、エンジニアとしてモノづくりの現場で奮闘してきた原は、「モノづくりの醍醐味を、ぜひ多くの人に感じてほしい」と願っています。
原:「形のあるモノだけでなく、形のないコト(価値)づくりも含めた“モノづくり”の現場では、企画を立てて、設計開発をして、製品を作って、お客様に届け、その後も改善を繰り返しています。それぞれの過程において、多くの仲間が集って『こうしよう、ああしよう』という議論が行われ、みんなで知恵を出し合いながら、いいモノを作ろうと奮闘しています。
そして、自分たちで考えてきたものがカタチになったとき、言葉では表現できない喜びや達成感で心が満ち溢れます。そんな瞬間を味わえる、まさにそれがモノづくりの醍醐味。こんなにおもしろいことは、他にないかもしれません。そのやりがいを、多くの人に味わってもらいたいです」
最後に、就職を考えている皆様に、原から伝えたいメッセージがあります。
原:「デンソーは今、入社して最初の3年間で『圧倒的に成長する』プログラムを用意しています。入社はゴールではなく、あくまでスタート。どこよりも成長できる環境が、デンソーにはあります。一度きりの人生、社会に大きなインパクトを与える仕事ができるデンソーの舞台で、自分らしく輝いて、自己実現をしませんか。ぜひ、一緒に挑戦しましょう」
個人の成長と、組織の成長を、両軸で叶えていく「PROGRESS」。 原は、熱い使命感を胸に、一人ひとりの声に耳をすませ、たしかな未来を作っていきます。